「あ‥‥ッはぁ‥‥、達‥哉」
 
 なんとか残った理性をかき集め、声を、言葉を紡ぎ出す。
 出来る限り優しく、子供をあやすように達哉を抱き締める。
「とり‥あえず‥、お前は一旦‥‥湯舟からあがりなさい」
「克ッ‥‥!?」
 拒絶ととられたのか、達哉が抗議の声をあげようとする。
 そんな達哉に微苦笑すると、額へ軽いキス。
 拒絶をしている訳ではないと、行動でも示してみせる。達哉が安心するように。
「違う、このままでは‥お前がのぼせてしまうよ?」
 なんとか笑いかけてみせようと、表情筋を酷使する。
「それに‥、仕上げがまだだ‥」
 達哉の洗っただけの髪を優しくすいてみせる。
「いらない‥‥‥。どうせ、また後で入ることになるから‥」
「では、とりあえず先に出ていてくれるかな?」
 絶対に、逃げたりしないと誓うから‥‥とつけ加え、もう一度軽いキス。
 コクリと達哉は頷いてくれた。
 
 
     [琥珀色の麻酔]
 
 
 はぁーーーーー‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
 達哉が居なくなったことを見計らい、心の中で盛大に溜め息をつき、
ガクガクと震える体をなんとか支える。達哉が恐かった。
 同性だとか血の繋がった兄弟だとか‥‥そんな倫理観など突きつけても、きっと仕方がない。
 そんな事を言って引き下がるようなことはしないだろう。
 
 色々と思いを巡らせるが、結局――達哉は克哉を逃がす気はなく、克哉は達哉を拒めない。 
 
「僕に‥選択肢は残されていない‥‥‥‥」
 
 そう呟くと、濡れた衣服を脱ぎ捨てた。
 
 お風呂からあがった克哉はバスローブを羽織り、達哉の元へと足を動かす。
「はい、お水‥‥‥」
 気を効かせてくれた弟の姿に、心臓が跳ね上がる。
 上半身には何も身につけておらず、鍛え上げられた無駄のない肉体が惜し気もなくさらされる。いつの間にか、自分よりも逞しくなってしまった弟の体に、一瞬目を奪われるが、これからの出来事を生々しく想像させられてしまう。
(ああ‥やっぱり駄目だ‥‥)
 意を決して、達哉に懇願する。
「達哉‥‥。スマナイ‥こんな事をいうと気を悪くするかもしれないが‥‥。シラフのままではちょっと‥‥‥‥」
「うん、丁度用意しておいたから」
 そう呟く達哉の表情は驚く程に穏やかだった。
「‥‥え?」
 達哉の手に握られた琥珀色の液体をたたえたボトル。
「ブランデー‥‥‥ッ、まさか、お前未成年なのにッ‥‥」
 妙な所で怒る克哉。
「違うよ、克哉用。それで‥どうする?」
 ロック?水割り?と普通に聞いてくる弟に、早く酔えるようにロックを注文する。
「準備が‥‥いいな‥」
 すると達哉は苦笑してとんでもない台詞を吐き出した。
「そう?だって‥俺、きっと抑えが効かないと思うから。克哉に無理させてしまうと思う。それでも、止めないからね‥‥少しでも痛みが和らげばいいなと思っただけ」
 やはり早く酔ってしまおう。
 手渡された液体を、まずは1杯あおる。
 喉を伝わる熱い感覚、強いアルコールの刺激が舌を焼く。
 ‥‥はぁ‥と、切なく扇情的な吐息がもれた。
 
 
 達哉の隣に座り、アルコールを摂取していた克哉がふいに口を開く。
「なあ、達哉‥‥。その『あちら側』の僕はどんな感じなんだ?」
「兄‥貴‥?」
「あ、いや‥‥スマナイ。話しづらければ‥‥ッ。その、同じ達哉でも全然感じが違うものだから、僕も違うのかな‥と」
「‥‥。ああ、違うよ。いつも眉間シワを寄せて、辛いことを全部背負って‥。俺に笑いかけてくれる事はしない癖に干渉ばかり‥‥‥」
 でも、と―――
「優しい性格はそのままだ‥‥」
 抱き寄せ、膝の上に座らされる克哉。
 
「飲んで‥‥」
 
 達哉は、零れそうになる琥珀色の液体を奪い取ると、自らの口に含み克哉にくちづける。
「うッ‥‥‥ふッ‥‥。達‥哉ッ!」
「俺は飲んじゃいけないんだろう?だったら、全部俺から嘗めとってよ‥‥克哉」
 壮絶な微笑み。なんて、なんて顔をするのだろうか。
 歯列を割り口内へと無理矢理侵入する舌。まるでそれだけが別の生き物のように這いずり回る。
 巧みなキスとアルコールのおかげで力が入らない。
「‥‥‥ふッ‥!?」
 突然野の浮遊感。そして落下。
 達哉によって柔らかいベッドの上に縫い付けられる。
 まるで、針で固定される蝶の標本の様に。
 これから捕食される草食動物の様に‥。
「克‥哉ッ」
「はぁッ‥‥はぁッ‥‥あッ!?」
 すでにキスなどという生易しいものではなかった。
 達哉は激しく口内を蹂躙し、犯してゆく。
 口から溢れた唾液を舐め取り、首筋をねぶる。
 克哉の白きめの細かい肌に、次々と赤い花弁を散らしていく。
 激しい快楽とアルコールによって、克哉の意識はとろけそうだったが、ふいに‥‥
「ごめん‥‥ッ、やっぱり余裕ないや」
「‥‥‥え‥‥‥あぁあッ!!」
 克哉の膝を割り、自らの体で両足を開かせた達哉は、保湿用のクリームをたっぷり塗った指で下半身の口へと侵入する。
 耐えようもない違和感と恐怖に強張る克哉の肢体。
 だが、早く自分の下半身の哮りを埋め込みたいと願う達哉は、肩に食い込む克哉の爪の痛みすら気にせず、容赦なく指で犯してゆく。
 2本‥3本‥。
 涙を流し許しを乞う克哉の表情に、気持ちが昂り、我を忘れた達哉は無理矢理克哉の中へと侵入する。
 
 声にならない克哉の叫び。
 
 苦痛に歪む顔すら美しく扇情的で、愛おしい。
 
「ああ‥‥‥克哉‥‥」
 
 肉食獣の食事のように、一方的で激しい行為は明け方まで続けられた。
 
 
 
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2006.08.21
な………なげぇーーーーーーーーー!!!!!!!
どこがSSSやねん!!

 

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