ピピッ‥‥ピピッ‥‥

 無感情な電子音が事実と言う名の現実を、伊織に突き付ける。
 
「37度8分‥‥ッて、マジかよ‥‥」
 
 この体を蝕む節々の痛みは、タルタロスで頑張りすぎた所為で、きっと疲れているからだと思い込み、
なんとか昼間の授業は耐える事ができた。
 自分は具合が悪いと認めてしまった瞬間、一気に症状が悪化する。
 
 
 何か胃に入れ、薬を飲んだ方が良い事は分かっていたが動けない。
 なんとかベッドへと潜り込み、目を閉じる。
 
 
 
 コンコンコン…
 
 どれくらい時は経ったのだろう。
 誰かが扉をノックする音で、伊織の意識がヒュプノスより浮上する。
 
「入るぞ、順平」
 
 無遠慮な、それでいて優しさを孕んだ真田の声。
「なかなかラウンジに来ないと思ったら、具合が悪かったか…」
 かぶっていた布団を優しく退けると、伊織の首筋に唇を当てる。
 
「ッ!!な…ななな…、なんつーことするんですかぁッ!!」
 
 眠りの淵でたゆたっていた意識が一気に覚醒する。
 
「何って?俺はただ熱を計っただけだが?」
 
 平然と言い放つ真田。
 
「ククッ、まさか期待したのか?」
「……ナッ!?そ…そんなわけ無いじゃないですかぁッ」
 熱と羞恥とで瞳が潤む。
「そんなに可愛い顔をするな」
 頬を掴み、涙が浮かぶ目尻を軽く舐める。
 
 
「そうだな、期待通り熱が下がるように思いきり汗をかかせてやってもいいが、
まずは何か食べるものをもってこよう。その様子では何も口にしてはいないだろう」
 
 
 楽しそうに部屋を出ていく真田の背を、複雑な表情で見送った。
 
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2006.09.17
『ミッドナイトレストラン7to7』ネタ
真田さーーん!!それはホストのワザですよぉおおおおおお!!!

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